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最後には勝っているという強さ国立に響くイラクコール

(Feb.19,2004)

最後には勝っているという強さ

サポーターはいつでも心配性だ。60分を過ぎた頃から埼玉スタジアムは変な空気が漂いだした。もしかして引き分けちゃうの?まだ時間は30分あるのに・・・。時間は刻々と過ぎ、ナイーブさはスタジアムを完全に覆いつくしてしまった。
半ば引き分けを受け入れようとしていた矢先に、妙なこぼれ球が久保の目の前に転がってきた。久保にとっては昨季のリーグ優勝を決めた決勝点に続くロスタイムのミラクルゴールが決まった。
僕は残り10分になったところで、トルシエ時代スペインに乗り込んでスペイン代表と戦った試合を思い出していた。格上相手にロスタイムまで0−0で乗り切っていたのに、最後にゴールを割られた。オマーンを当時の日本に、日本を当時のスペインに置き換えて見た。これでロスタイムに1点もぎ取ったらこのあと強くなるだろうなぁ。格上は最後は勝つ、そういう試合にならないかなぁ。
そう思っていたところにこの決勝点だ。僕は日本が公式大会でロスタイムに決勝点を奪って勝ちきった試合を初めて見たような気がする。むしろドーハの悪夢の失点の方が印象が強い。だから、こういう勝ち方ができるようになった日本を評価したい。
みんなが思ったはずだ。やっぱり初戦て難しいもんなんだなぁ。これは経験した者でないとわからないのだろう。
そういう意味では、ロスタイムに入ろうかという時間帯で、苦い思いを抱えながらもボールをタッチに蹴りだし、相手選手の手当ての時間を作った中田のクールさには脱帽だ。まさかその行為がチームに落ち着きをもたらし、それが決勝点につながったなんていう因果関係はないだろうが、そんなふうに思ってしまうほどの印象的なシーンだった。
とにかく、えらく苦労した一戦だった。これがW杯の予選というものなんだな。あらためて道のりは大変だ、ということをみんなが思い知った。そして、いよいよドイツへの道が始まった。その第一戦にカッコ悪かったけど勝った。それで良しとしようという試合だ。
内容はこの際問わない。むしろ、真剣勝負の予選を積み重ねて呼吸を合わせ、約束事をつくっていく、つまりチームを作っていくということでいいのだと思う。海外に選手を輩出している国が抱える悩みを日本も持つようになったわけだ。
これからも胃がキリキリするような試合が続くだろう。それを僕らは存分に楽しむことにしよう。

国立に響くイラクコール

意義深い一戦だった。時間はさかのぼって日本対イラクのテストマッチだ。試合開始前、外務省、文科省のトップの人、そして川淵キャプテンを従えて、整列した選手たちを激励する高円宮妃久子様がとても誇らしかった(僕は久子様のファンだから、毎回この光景はうれしいのだ)。
スクリーンに大写しになったイラク選手は大きな口で国家を熱唱していた。国立競技場の一角で起立してこの光景を眺めていた僕は思わず涙腺がゆるんでしまった。あの国難の地から彼らは胸をはって母国を代表して闘うためにやってきた。両チーム一緒に肩を組んで撮影したあとピッチに散った選手たちの動きは機敏で一生懸命だった。国際舞台でサッカーができることへの喜びに満ちていた。好感度抜群のパフォーマンスだった。満足な資金もない状況で大したトレーニングはできなかっただろうに、とても立派な振る舞いだった。終了後、スタンドからはイラクコールが響いていた。
日本という国がサッカーを通してイラクの復興を応援する。イラク国民が明日を生きるための勇気を取り戻すためのお手伝いをする。そういう試合だった。
イラク選手団の渡航費とイラク国内での放送経費をすべて日本政府が負担したそうである。すばらしいことじゃないか。
確かにこの日の日本代表のパフォーマンスは良くなかった。W杯予選の本番前に一度反省点を確認したという試合になった。しかし、それ以上に日本サッカーが国際平和に貢献できる機会を得たという喜ばしい試合だったのではないか。
次回はイラクへ行って試合をするらしい。日本サッカーの成長を別な側面で見た一日だった。


 

 

                  

 

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