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ジーコは動く/岡田が引っ張る

(Dec.12,2003)

ジーコは動く


東アジア選手権は韓国が総得点数の差で優勝した。日本は1点に泣いた格好だ。とはいえ、東アジア選手権というタイトルの重さを考えると、悲観する必要はない。むしろグループリーグという形態のシミュレーションができたと解釈する方がいいだろう。この状況があったからこそ、ジーコが初めて動いた。
今までジーコは、動かないのか、動けないのか、という議論を提供し、その力量を問われてきたわけだが、この韓国戦でようやく試合を動かそうとし、その意志は観ているものに伝わった。その意志がスタジアムの盛り上がりを呼んだだろうし、TVを通してもよく分かった。何よりもピッチで戦っている選手たちに明確なメッセージを伝えただろう。だからこそ、数的不利にも関わらず、後半日本の怒濤の攻撃が生まれたわけだ。交代選手に込められたメッセージを選手も観戦者も理解し、一体となったからこそあの力強さが引き出されたのだろう。この韓国戦の最大の収穫はそこにあるのではないか。
ま、どうせなら今まで見たこともないぐらい腰の引けた迫力不足の韓国相手に、たとえ1人少なかろうが勝っちゃっておけば良かったとは思う。ちょっと残念。
プレー面では、アレックスと山田の両サイドは相変わらず閉塞感が拭えない。特にアレックスの方は、本人が悪いのか、彼の力を引き出せない周りが悪いのか、胸のすくような突破が見られない。スカッと突破するリズムがつかめないことが、クロスの精度を悪くしてしまうことにつながっている気がする。アレックスのクロスにミスが多かったのは、そういうリズム感の無さが原因なのではないかと思う。
それと3−5−2は選手のポジションチェンジが少なく、選手個々がポジションにしばりつけられた感じがしてあまり好きではない。流動性があまりないからアイデア不足に陥っている。1人少なくなってポジションを崩してでもがんばる状況になってダイナミックになったのは皮肉だね。
とにかく「ジーコは動く」ということがわかった状態で、W杯1次予選を迎えることができる。就任当初「黄金の4人」を見られるということで、ジーコに期待を寄せていた。しかし、試合を重ねてもなかなかスカッとした内容に出会えなくて、実は内心ほんとにジーコじゃヤバイかも、と思い始めていたところだった。少しだけ胸のつかえがなくなった感じがする。

岡田が引っ張る
監督といえば岡田監督だ。マリノスファンとしては非常に喜ばしい完全優勝だったわけだが。同じぐらいうれしかったのが、マリノスが戦う集団に生まれ変わり、そのスピリッツがシーズンを通して表現できたことだ。これは監督の功績が大きい。監督でここまで変われるのかと思うほどだ。岡田監督のインタビューに、「ひたむきさや最後まであきらめないという気持ちが感動と喜びをもたらす。その前提の上で、技術・戦術・ファンタジーがなければならない、というようなことを何度も繰り返し繰り返し言ってきた」とあった。今まではスマートでテクニカルだけど淡泊で一体感のないチームだったマリノスが、不格好だけどチームのためにみんなが動き、最後まであきらめずに自分の力を最大限に表現しようとするチームに変わっていた。きっと、日々選手と正面から向き合い、自分もリスクをとるからお前たちも殻を脱ぎ捨てろと言い放ち、チームをリードしていったのだろう。もちろん精神論だけじゃなく、綿密な計算と鋭い感覚も持ち合わせていないとJリーグのトップに導くことはできない。僕は、岡田監督がこれからのJリーグを引っ張っていく存在になっていくような気がする。そして数年後には名監督の地位を不動のものにしているかもしれない。

 

 

                  

 

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