衝撃の一日・・・もっと力強く
座っている場所から30分ぐらい立てなかった。衝撃だった。気持ちを整理するのに時間がかかった。
日本の敗退ではない。2試合のコントラストにショックを受けてしまったのだ。目の前ではハイライトシーンに続いてロッカールームへ引き上げていく歓喜の韓国選手たちを映し出していた。
日中の試合で日本はトルコの前に屈した。自分たちのミスの後のセットプレーは気をつけなければいけないのに、ポッカリ穴が空いてしまった。マークミスでの失点はとても悔いが残る。とても悔しい敗戦だった。
先発メンバーをいじってきたことは何某かの意図(ギャンブルだったね)があってのことだろうから、今更とやかく言わない。
三都州を下げるのは早かったのではないか?延長戦があるのだから2枚いっぺんに代えるのは得策ではなかったのではないか?でもそれらも結果論だからとやかく言うのはよそう。
鈴木へのボックス内でのスライディングはPKではなかったのか?三都州のFKが内側にはねていたら。
そうだ、タラレバはよそう。結局トルシエのギャンブルは失敗したということだ。
よくここまで来たとも思うし、W杯はそんなに甘くないということは前からわかっていた。ここから先はドイツ大会でのお楽しみにしようではないか。そうやって気持ちを整理して夕方を迎えた。
ところが、5時間後、その穏やかになりかかっていた心を思い切り揺さぶられてしまった。
韓国がよりによってイタリアにあんな勝ち方をするなんて。
前半の失点の仕方が同じで、83分までの試合経過が同じだ。そして結末は正反対になっていた。
これほどまでに厳しいコントラストを見せられて平気でいられるはずがない。
こんな勝ち方ができるのか。70年大会の西ドイツやイタリア、82年大会の西ドイツ、94年のイタリア。崖っぷちからよみがえった伝説のチームだ。でもそれらは格下のチームのものではなかった。その点において今回の韓国の勝利は価値がある。伝説のチームたちと並んで今大会のヒーローとして、日本のライバルである韓国が名を連ねたわけだ。
逆転のシナリオはあきらかにテジョンのスタジアムをおおっていた。精神力だけが勝因ではない。もちろん笛の偏りがあったことは否定できない。赤いサポーターの圧力は半端じゃない。
そして最大の演出家はヒディンクだった。時間の経過を追って、守備を3枚削って攻撃を3枚投入した。史上最大のリスクテイクだった。勇気あるギャンブルだった。作戦がシンプルなだけに選手は迷うことはなかった。圧力はイタリアの選手から精気を奪っていった。もはや戦術がどうのこうのという次元ではなかった。そしてアン・ジョンファンはその瞬間ゲルト・ミュラーになっていた。
見事と言うしかない。天晴れと言うしかない。すばらしい試合だった。
悔しさ半分、尊敬の念半分。崇高なる試合を演じた韓国チームに拍手を送ろう。
この衝撃の一日をを経て思い至ったことは、日本はもっと強くならなければいけないということだ。歴史が積み重ねによってのみ創られるのなら、密度の濃い経験、しのぎを削る競争、妥協を許さない視線を継続することが必要だ。
でなければ、ベスト16の壁は破れない。
中田英が言う「足りなかったモノ」とはなんなのか。技術的、戦術的にもっともっと高いところを目指さなくてはいけない。それを最高水準のものにするべく努力しなくてはいけないということだろう。さらに付け加えるならば「勝利への飢餓感」だろう。このエモーションがあってこそ培った技術、戦術が最大限に発揮されるのだろう。
来年はアテネ五輪の予選が始まる。2004年の五輪本番を終えれば、W杯ドイツ大会の予選はすぐ目の前だ。サッカーカレンダーは休む暇がない。
日本代表のリスタートを見守ろう。ここまでの実績は認めよう。目標もクリアした。胸をはっていい。そして次は、もっと高い目標をもっと力強くクリアしようではないか。
ベスト8が出揃った。顔ぶれを見ていると、これまでのW杯の常識でははかれない大会になっていることが一目瞭然だ。列強の強さに期待したい。新興勢力の力を出し切る戦いに期待したい。
個人的にはブラジルかな。
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