オーストラリア戦チェック
試合終了のホイッスルと同時に、いつもクールぶっている松田が握りしめた両の拳。それは、あらゆる悪条件を跳ね返したあとに見せた会心のガッツポーズだった。目を開けているのもつらい雨、気が散ってしまう雷の音と光、刻々と悪くなっていくピッチ、森岡の負傷離脱、オーストラリアが取ってきた変則的な攻撃フォーメーション、そして鈴木の退場。
日本代表がこんなにもがんばれるチームだったのかと思わせるほどのゲームだった。マゾヒスティックなゲームだった。とはいえ、ブーイングものだったわけではない。オーストラリアの作戦があたって、日本は苦労したのだ。
鈴木の退場は確かに痛かったけど、それにより、みんなが残りの時間をどう過ごすべきか容易に選択できた。10人になって、1点リードしている状況で、自分たちの時間帯が少ないゲームなら、カウンターしかないだろうと、気持ちが一つになったわけだ。開き直って頑張り通すという道を選ぶことができたという意味では、鈴木の退場がいい契機だったとも言える。これはよくあること。
そして後半の約25分間、猛攻に耐えながらも、決定機をいくつも作ることができた。この展開で、カウンターで2−0にして勝っていたら、それこそ試合巧者だった。こういうサッカーができるようになったというのは進歩の証だろう。
この試合は中田のすごさが際立った。本当にすごい男だ。態勢が死んでいてもパスをつなぐ、相手が何人囲んでいようと一人でシュートまでもっていく、そして絶好のチャンスに決める。格が違っていた。
戦術的には、難しい宿題を抱えた。オーストラリアは基本的に4−4−2なのだが、左右のMFがかなり高く張って、時として4−2−4、あるいはサイドバックが攻撃参加すると2−4−4のような形で攻めてきた。つまり、両アウトサイドの波戸と小野の位置取りを後ろに下げさせることで、中盤にスペースを作り、日本のプレスを効かせないようにしていた。これに苦労させられた。
オーストラリアはいいチームだった。フランスを破ったのもあながちまぐれではないと思わせた。
決勝の相手フランスは、やはりフラット3が苦手とする4−5−1(見ようによっては4−3−3)のシステムを取ってくる。日本のDF陣がオーストラリア戦の教訓を生かし、臨機応変な対応でフランス攻撃陣を封じるところを見たい。
フランス戦チェック
彼我の差はかなり大きいね。しかし、今回は全員の意識と集中力が保たれていて、しっかりとしたゲームができたとは思う。今の日本の実力なりの試合が。でも、3月のパリのフランス代表とは違っていた。あのときの破壊力は今回のフランスにはなかった。ジダン不在の影響は確かにあった。それなのに、70%の出来のフランス相手に点が取れそうもないというのも事実だということだ。
日本の布陣は5人のDFラインで最終ラインに網を張って、ゾーンで守るというやり方なのだろう。当然中盤は完全に支配される。何せDFラインに2人あまっているわけで、中盤では1人足りなくなる。当然守備的MFは3人必要になる。とすると、ボールを奪ったとき前線のターゲットがほとんどいない状況で始めなければいけないわけで、これだと攻めきる可能性は非常に低い。中田がいれば少しは違ったのだろうが根本的には変わらない。
フランスのようなレベルの高いチームで3人FWにしてくる相手に対しては、現状の日本のレベルではこのシフトしかないのだろうか。それは、後半30分まで失点をしないで、最後の15分に反撃を試みるというサッカーだ。カメルーン戦のような攻撃的な守備はできないのだろうか。
単にシステムの問題なら、もう少し工夫があっていいと思うのだがどうだろう(4バックをオプションとして持つとか)。
少ない時間でいいから、攻撃的でクリエイティブな日本のサッカーを見たい。それは1試合の中で、どういう時間にどういう選手起用をするのかという、監督のゲームプランの話になる。トルシエには是非それをやりこなして欲しい。選手も1試合の中でゲームの流れを読み、時間の経過に応じて自分の役割と瞬間瞬間のやるべきことを的確に把握し、プレーに表現できるようになって欲しい。一流の国はみんなそれができる。
コンフェデレーションズカップの総括
とはいえ、準優勝は立派だった。グループリーグ突破が目標だったから、目標達成と言っていい。ただし、列強に追いついたかといえば、「いい試合ができるようになった」だけで、実力の差はちゃんとある。
相手が格上でも、少しは勝つ可能性が感じられるチームになりつつあるというだけだ。2002年にグループリーグを突破できる保証になんかならないということを忘れちゃいけない。まあ、昔の日本代表から考えると大きな進歩と言っていいんだけど。
収穫は「守備が整備されてきた」ということ。グッと成長した川口と松田、森岡、中田浩の3人は自信と落ち着きを手に入れたようだ。
鈴木隆行の台頭がうれしい。それから守備的MFの層が厚くなったことも収穫だ。稲本、戸田、伊東、明神、当然名波。
今後の課題として忘れてはいけないのがコンディションだ。名波、俊輔、高原、柳沢、みんなが大好きな選手達が離脱してしまった大会から、最後は、中田英、小野、そして稲本までいなくなってしまった。みんな2000年のヒーロー達だ。これだけ攻めのタレントが不足していたら、攻めることはできないな。2000年みんな働きすぎたということか。そのつけが今まわってきているのだろう。これからの1年はコンディション作りも大きなテーマだ。このあとすぐキリンカップがあるけれど、チーム作りは戦術だけじゃない。照準を2002年5月31日にあわせて、今から身体のケアをして欲しい。
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