Last update 2004/04/26.

「趣味・ドライブ」

自分の経歴などを書くときに、趣味について記述する欄があります。
そこに「趣味・音楽鑑賞、映画鑑賞、読書、ドライブ」と書き込む人は結構多いのではないでしょうか?
私、長太郎の場合も「趣味・楽器演奏、ドライブ」などと書くことが多いです。
そこには間違っても「軍事・小火器の研究」「マイナーな腕時計集め」「グラビアアイドル鑑賞」などとは 書いたりしません。そんなことを公開しようなら、それこそ「危ないヤツ」のレッテルを貼られてしまいます。
「趣味・音楽鑑賞、映画鑑賞、読書、ドライブ」というのは万人に理解される健全な趣味の代表格なのです。

しかし、本当にそのような認識で良いのでしょうか?
ロッキングチェアに揺られながらクラッシック音楽を聴き、海外の文学作品を愛読し、 家には名画を納めたDVDボックス。そしてたまにはトヨタ・プリウスに乗って軽井沢をドライブ..

断言しましょう、そんなヤツいません。

音楽は演歌を聴こうが、デスメタルを聴いてダイビングしようが「音楽鑑賞」と書けないことはありません。
フェイバリット・ムービーが「第三の男」でなく、「死霊のはらわた」でも「キラーコンドーム」でも 「映画鑑賞」には違いなく、愛読書がドフトエスキーの「罪と罰」でなくて、 XXロマン文庫の官能小説でも趣味は「読書」と主張して何ら嘘にはなりません。

そしてドライブ、そうドライブです。
この世界にも確実に、一般人の価値観と異なる嗜好を持った人たちがいます。

「明日ドライブに行くんだ。」と聞くと、ふつう、どのような光景を思い浮かべるでしょうか。
海でも山でも構いませんが、高速道路で目的地に向かい美味しい食事に温泉、レジャー施設などを満喫し、 渋滞の高速道路の上り線を帰る、というのがパターンではないでしょうか。
そういうドライブは飽くまで、目的地に行くまでの交通手段としてクルマを使って移動する=ドライブする、 という概念なんだと思います。

しかし、ドライブに対して「異なる価値観を持つ人たち」−私もそうですが−はクルマに乗ることが 目的であって、極端に云うと、何処に行くかはどうでもいい問題です。
ただ「何処でもいい」といっても、休日の都市部なんてどこの道も混雑してますし、走っていても まったく気持ちよくありません。
そうなると必然的に、クルマの少ない、人里離れた山中などを目指すことになります。
そこに着いたら、別にどこか「アミューズメントな場所」は探しません。
私たちにとっては道自体が"アミューズメント"な場所のです。

はじめのうちは、クルマが少なく真っ直ぐな、走って気持ちの良い道を探して走っていました。
しかし、地方の道路がそれほど完全に整備されているかというと、そんなことはなく、途中でいきなり 1車線の道になったりします。
狭い道は誰でも嫌なものです。嫌々ながらもそんな狭い道をやり過ごしたりしていました。

ところが人間、不思議なことに、そんなことを繰り返しているうち、さらに刺激を求める様になります。
「あの狭い道を抜けられた」ことが一種の成功体験となって、更に困難な状況を求めるようになるのです。
「ツーリングマップル」(注1) を買い込み、自宅で酒の肴に見ながら「この道は面白そうだ」 とかいって敢えて曲がりくねった道に行ってしまったり、そのうち、「この道を走りたい」為に 泊りがけで出かけてしまったりします。

本来、道というのは目的地に向かうための手段であるはずなのですが、その「手段」である 道をを走ることが「目的」にすり代わってしまうのです。
もうこなるとアナタも立派な「国道(酷道)中毒者」と云っていいでしょう。
「酷道」というのは何だか聞きなれない、怪しさ100倍の言葉ですが、試しに検索エンジンに 入れて検索してみてください。このような国道(酷道)マニアは確実に、それも結構多数、 存在しているのです。

現在、日本には、全国に450以上の「国道」指定を受けた道があります。
大抵番号が小さい方が、旧くからある主要な道ということになります。国道1号線や国道2号線などですね。
番号が大きくなるに従って、新しく指定された国道になりますが、大きい番号である300番台、400番台の 国道には「エグい」ものがかなりの数あります。いや、整備されている道の方が少ないと云えるかもしれません。

300番台、400番台という大きな番号の国道は、「ついこの間まで林道だったが、先生(政治家)の尽力で 国道に昇格した」などという道ばかりで、走っているとこういう国道より立派な県道や地方主要道に出会います。
私も「今日はこの3ケタ国道を走破するぞ」と気合いを入れて臨んだら、いつの間にか県道を走っていた などということもあります。
引き返してみると、「こっちのこんな脇道みたいなのが国道だった」ということも珍しくありません。

R421名物のコンクリートゲート R421石榑峠
国道の"おにぎり"も藪の中。
前方に見えるゲートが車幅を
規制するもの。
こちらは三重県側。
R421滋賀県、三重県県境の
石榑(いしぐれ)峠。
ここは車幅2m以上のクルマは
通れない。
一応、舗装されてるが
路面はかなりタフ。
酷道マニアの中では有名な「酷道」も幾つもあって「落ちたら死ぬ」の立て看板で有名な 国道157号線(石川県金沢市−岐阜県岐阜市)、 「天国に一番近い酷道?」で名高い、四国を縦断する国道193号線(香川県高松市−徳島県海南町)、 車幅2m以上の通行車を阻む「コンクリートブロック」がある国道421号線 (三重県桑名市−滋賀県近江八幡市、これは筆者も走りました。)など、 名所(迷所?)と謂われるところはたくさん存在しています。
そして魅力的なのは、そのどれもが「無料」で楽しめるのです。(国道なんだから当り前。)

しかし、なぜ私たち「酷道マニア」(<-筆者はまだまだ中級程度。)は敢えてそんな道を走るのでしょうか?
人にもよるでしょうが、強いて云うなら、(1)「スリル」(2)「達成感」(3)「話のネタ」といったところかもしれません。

クルマ1車線程度の、細く見晴らしの悪く曲がりくねった道(これで雨なら最悪の条件、)をひたひたと、 「あぁ対向車が来ませんように」などと思いながら走ります。
なら始めからそんな怪しい道を走らなければ良いのですが、この胃が持ち上がるような不安感が何とも云えません。
不幸にも対向車に出会ってしまった場合、すれ違える広さのところまでバックしたり、路肩ぎりぎりまで クルマを寄せたり、互いのドライバーが最大限の努力を払って離合(すれ違い)します。
これがまた、お互いが協力して何かを成し得たかのような、小さな感動があるのです。(本当かよ。)
そんな辛い思いを繰り返しながら、峠の頂に着きます。そこから見下ろす景色は最高に違いありません。 (現実的には、もっと怖い下りのセクションがあるんだけど..)

また、酷道は大抵の場合、曲がりくねった道なので、イメージ通りにコーナーをクリアできた時は 何とも云えない充実感があります。
ただし、「落ちたら死ぬ」までは行かないでも、「落ちたら歩いて帰るの大変。下手したら遭難。」くらいの 道はざらにあるので、走行不能に陥るような事故だけは避けねばなりません。
(そういう道は通りがかりの車などほとんど期待できず、もちろんケイタイも入らない。)

しかし、「酷道マニア」が何より悲しいのは、自分にとっては、こういった誇らしい(?)体験をしたところで、 一般の人にうったえてみても、ほとんど理解されないところかもしれません。
だから「酷道マニア」のホームページって意外に多いのかもしれません。(このページも含めて。)

近隣に「酷道」のある地域の方、他県ナンバーのクルマがそんな道に踏み入っていったら、 暖かく見守ってやって下さい。
酔った席で、いきなり「酷道」走破の武勇伝を聞かされたら(これは走らないとぜったい解らないと思う)、 右から左に抜けても構いません、聞いているフリでもしてあげて下さい。

経歴に「趣味・ドライブ」と書く人の中には、そんなマニアな人がいるかもしれないことを 心のどこかに留めていただけたら幸いです..


ツーリングマップル
旺文社から発売されている、主に二輪車でのツーリング目的に編集された地図。
各地の名所に関する情報ももちろん掲載されているが、国道や県道、林道に関する情報が 細かく掲載されているのがミソ。
適度な大きさで(A5版)、手にとって読みやすい。
私、長太郎も「関東甲信越」や「中部北陸」などを愛用中。
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