その場その場に相応しい行い、というものがある。
我々独身サラリーマンがよく利用する牛丼チェーン店もまた例外ではない。
第1回目の今回は、牛丼チェーンの最大手である
吉野屋
でのマナーをみてみよう。
まず店内に入ろう。
「いっしゃいませー!」の威勢の良い声があなたを出迎えてくれる筈だ。
都市部の吉野屋の場合、多くは一人で食べる事ができるカウンター席が中心だ。
国道沿いなどにある店舗では、カウンター席の他に4人掛けのテーブル席などもある事がある。
が、しかし、吉野屋には「一人で」入店すべきだ。
これから牛丼をかっ食らおうと云うのに、会話など無用だ。
ここで、悪い例を見てみよう。
(バカップルで入店)
店員:「(ぃ)らっしゃいませーっ!カウンター席の方へどうぞぅ!」
女:「えー、何だぁ、混んでてぜんぜん空いてないジャン。一緒に座りたいんですけどぉ。」
店員:「えーっ..ちょっとお待ち頂く事になりますけどぉ..」
女:「けーっ、サイテー」
前述の例の様に、仮に混雑時に連れを伴って入店したとしても、隣同士の席につく事
にこだわってはいけない。これはファーストフード店入店時には遵守せねばならない、
最低限のマナーだ。
それまで親密に話していたとしても、入店した際、個別の席につかねばならない事もある。
その場合は、あくまでクールに別々の席につき、店内の回転をスムーズにするよう心がけるべきである。
そしてようやく席についたバカップル。店員がオーダを取りに来た。
店員:「ご注文はお決まりですか?」
女:「えーっ..とぉ..牛丼の並とぉ、たまごにしよっかな。」
男:「特盛とたまご。」
おっとこれはいけない。
吉野屋には現在(2002年4月現在)、
朝定食
を除くと、牛丼と
牛鮭定食
の2種類しかメインメニューが存在しないのだ。
オーダー時に「牛丼の..」などというオーダーの仕方はまったくクールでない。
男の方は多少の心得があるのか「
特盛」
とだけオーダしている。
ちなみに、「選ぶ美味しさ」でお馴染みの「松屋」でも「並」と云えば「牛丼の並盛り」で通じる。
筆者のオーダーの例はこうだ。
店員:「ご注文はお決まりですか?」
長:(すっかり決まっているくせに壁のメニューに目をやり)「えっと、
並
つゆ沢(だく)と
味噌汁。
あと
生野菜
で。」と、やや低めのトーンでオーダー。
店員:「(生野菜の)
ドレッシング
はどちらになさいますか?」
長:(ちょっと気だるそうに)「"胡麻だれ"で。」
まぁ、牛丼並に対して「
つゆ沢
」をオーダーしてしまうあたりは、まだまだ修行が足りないとも思う。
また、店員に不快感を抱かせない程度にLowテンションでオーダーする事で、
「吉牛のセミプロ」、もしくは「吉牛のプロ」をさり気なくアピールする事ができる。
筆者が聞いた事があるオーダーで最も渋かったものはこれだ。
「並。つゆ抜き、ねぎ抜きでね。」
をぉ、何とも渋い..オーダーしたのは確か、40代くらいのオヤジであったが、これ
はある意味、吉野屋店員と吉牛(吉野屋の牛丼を略して)食いのプロとの真剣勝負と云えよう。
肉そのものの味と米のみでこのオヤジを満足させねばならない。
つゆやネギで誤魔化しが効かないのだ。
このオーダーを受けた厨房の店長(かどうかは不明だが)はさぞ緊張感のある「盛り」
になったことだろう。
このオヤジは俺の羨望の眼差しの中、「つゆ抜き、ねぎ抜き」の牛丼を紅生姜もかけずに、かっ込んだ。
話を戻そう。
牛丼はなるべく早く食べたいところだ。
これはこうして語っている私自身、ひじょうに恥ずべき点であるが、「並、生野菜、味噌汁」のセットだと
食べ終わるまでに、どうしても15分は費やしてしまう。
他の猛者たちは、こちらが生野菜を食べている間に、大盛り、特盛りをかっこんでしまうというのに。
先ほどのバカップルは、その後どうなっただろうか。
(入店後40分経過、食事後15分経過..)
女:「でさぁ、明美がカレシにそう云ったんだって。で、そのカレシがさぁXXXでぇ。
そんなの有り得ないって感じー。」
(順番を待つ人々の冷たい視線..)
やはりこれもいけない。
もし、自分だけ先に食べ終わり、連れが食べ終わらなくっても、混雑時は先に席を立つべきだ。
連れを待つのであれば、外に出て一服でもしていよう。
前述したが、ファーストフード店は客の回転こそが命なのだ。
こんな素晴らしい牛丼を提供してくれる吉野屋に対して我々ができる事の1つが、迅速に牛丼を食う、
という事なのだ。
そして食事が済んだら勘定を済ませよう。
例のバカップルはどうだろうか。
男:「すいませーん。」
店員:「ハイ、有難うございます。特盛り、たまご、並、たまごで\920になります。」
男:(一万円札をヌっと出す。)
店員:(厨房の方に向かって)「いっちまんえん(一万円)両替お願いしまーす!」
女:「ナニ?マジ?何で向こう(厨房)行っちゃうの?有り得ないー。」
この男も所詮はシロートだったようだ。
吉野屋のカウンターのレジには、防犯のためであろう、5千円や一万円などの高額紙幣は収められていない。
吉野屋で5千円や一万円で支払う場合、「5千円両替」「一万円両替」の洗礼を受ける事になるのだ。
手持ちに細かい金が無く、急いでいる時などはこのシステム、正直イライラする。
私の場合はこうだ。
食べ終わったら、立ち上がりつつ、「ごちそうさま。」と厨房の方に声を掛る(やはり若干のLowトーンで)。
尻ポケットに手を入れ財布を抜いて、店員の会計を待つ。
店員が会計ぜずともとっくに判っている。並、生野菜、味噌汁で\420だという事は。(2002年4月現在)
店員:「並、生野菜、味噌汁で\420です。」
長:「これで。」(と、\1020を出す。)
店員:「\1020からお預かりします。\600のお返しになります。ありがとーございましたっ!」
他の店員:
「ありがとーございましたっ!」
「またご利用下さいませっ!」
「ありやとーございましやっ!」
私のやり方が決してクールだとは云わない。しかし、このスタイルを確立してからは気に入っており、
ここ5年来はこのやり方である。
所詮は牛丼、されど牛丼。
食う側にも食わせる側にも暗黙のルールが存在するのだ。
粋な「吉牛のプロ」を目指してもらいたい。
何時か私もこう云えるような人間になりたい。
「並。つゆ抜き、ねぎ抜きで。」