Last update 2001/03/31.

右ハンドルか左ハンドルか− 人道車系統一運転理論/富沢昭三:著 文芸社

「右ハンドルか左ハンドルか」カバー 「クルマのハンドル位置は右ハンドルが適切なのか?左ハンドルが適切なのか?」という、ありそうで、 なかなかなかったテーマという事で、興味を持って読んでみました。

筆者の富沢氏は、プロフィールを見ると、主にタクシーの運転手としてキャリアを積まれた方のようで、 このテの本の著者としては、ちょっと珍しい経歴の持ち主といえるかもしれません。
失礼を承知で敢えて云わせて頂くと、プロのライターではないということもあって、 文章の表現も上手いとは云えません。 また、ご高齢のせいもあって、表現に旧さを感じる事もあります。
しかし、氏の理論には興味を持ちました。

結論から云うと、富沢氏の主張は、「(大多数である右利きの人を対象に場合)左ハンドル、左側通行が ベストである。」というものです。
これは世間一般で云われている、「左側通行では右ハンドル、右側通行では左ハンドル」という論理と まったく正反対のもです。
この「左側通行、左ハンドル」の利点を、人間の行動学(特に利き手との関係)、ハンドル位置による視点の置き方、 ハンドル位置による道路走行上のクルマのポジショニング、道路のインフラを含め「左ハンドル左側通行」の理論を 展開して行きます。

文中、意外だったのは、アンケートの結果でプロのドライバー(タクシー運転手なども含む)で左ハンドルを 支持しているらしい人が多い事でした。
私個人も今では左ハンドルの方が運転歴が長くなってしまった事もあって、左側通行の交通事情でも 左ハンドルは特に不都合だとは感じません。たまに自動発券機が右側にしかない時に不便を感じる程度でしょうか。

富沢氏の理論では、多くの人の利き手である右側の空間が空いていて、なお且つ利き手でシフト、スイッチ類を 操作できる点でも左ハンドル有利としています。しかし、これはあまり実感しないというか、右ハンドルの場合で 左手でシフトチェンジする、スイッチを操作する程度の動作では特に不便を感じていなかったように思います。 ただ、左からクラッチ、ブレーキ、アクセルと並ぶペダル類については左ハンドルの方が無理がない様に思いますね。

また、氏の各論については共感しかねる部分も幾つか(いや、結構かな?)ありました。
クルマはオーバーステア気味の方が安全だとは思いませんし(それをコントロールできる人にとっては安全かも しれないが、一般的とは思えない)、「滑らかでないブレーキ(カックンブレーキ)をするのクルマは事故が少ない」と いうのも根拠があるように思えません。

しかし、私自身も左側通行で左ハンドル車を運転する事について、不都合どころかメリットもあると感じていましたので、 この本で裏付けが取れたようで、嬉しく思ったのも確かです。

理論、理論、と書くと何やら難しそうですが、文章も平易で読み易いですし、ボリュームも200ページほどです。
私の場合、たまたま書店で見つけて購入しましたが、クルマそのものに特化した本ではないので、図書館なんかにも あるかもしれません。
左ハンドル・ユーザが読めば共感を得られますし、右ハンドル・ユーザが読むと左ハンドルに対する偏見みたいなものが 少しはなくなるのではないでしょうか。

人から「カッコつけて、左ハンドルなんか乗って..」と誤解される向きには、とうとうとこの本の論理を説明して あげましょう。たぶん嫌われると思うけど。

*初版 2000年4月15日


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