戦争映画で外れなし、と云われているジャンルに「潜水艦モノ」というのがある。
古くはロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンスの「眼下の敵」や、「Uボート」
「レッド・オクトーバーを追え」「クリムゾン・タイド」、日本のコミックでもかわぐちかいじの
「沈黙の艦隊」、最近では「U-571」とどれも名作揃いだ。
そもそも「潜水艦」という状況はいやが上でも緊張感を高める要素ばかりだ。
作戦行動においては、目で見る事がほとんどできず、頼るのは音波のみ。爆雷攻撃や、アクシンデントで
いつ圧潰するか分からない恐怖..
この本は、昭和20(1945)年7月に日本海軍の潜水艦・伊58号が、アメリカの重巡洋艦・インデアナポリスを
撃沈した史実を元に構成されている。(これは記録されている、日本海軍による最後の米大型艦船撃沈。)
物語の半分は事実だが半分はフィクションの要素も含まれている。
事実、重巡インデアナポリスの乗組員は史実に基づき、実名で登場し、日本の伊号潜水艦乗組員は意図的に
仮名で登場している。
物語はある命令を帯びた重巡インデアナポリスとそれを阻止しようとする伊58号潜水艦との戦いを描いた
ものだが、前半、インデアナポリス、伊号、それぞれの乗組員と物語が並行して展開し、中盤以降、
それらが一気に収斂していき登場人物の描写、物語に厚みを持たせている。
(正直、前半はちょっと根気が要るが、後半のクライマックスで全て許せる。)
インデアナポリス艦長と、伊号に乗り合わせた司令との意外な因縁、また両者の虚々実々の駆け引きなど、
潜水艦モノには欠かせない緊張感にあふれた作品だった。
映画化すれば「U-571」なんかよりも素晴らしい傑作になるだろうが、結局、インデアナポリスが
撃沈されてしまうので、ハリウッドでは映画化しないだろうな、やっぱ。
というわけで今回は5点オーバー。個人的には久々に出会った大傑作。
ちなみに「雷撃深度19.5」とは魚雷発射時の潜水艦の潜望鏡深度なのだと思う。