幸松 Report #6 from U.S.A. |
LAレポート#6: ストライキなんて大嫌い! 前回のレポートで、アメリカにおけるサッカーの不人気に付いて触れましたが、以下のようなフィードバックを頂きました。とても興味深いです。大変ありがとうございました。 l とっても便利な手をどうして使えなくしてしまうのか全く理解できないから。 l 45分間休み無しで、目を離せない為、コマーシャルを入れにくく、高いスポンサー料を取り難い。よってTV放映がされにくく、お茶の間を賑わすことができない。 l アメリカでは女子の競技人口が高い為、ワイルド好きでマッチョな男達が「俺達野郎のスポーツじゃあねえ」と決め付けてしまっている。 そう言えば、こちらのケーブルTVでEngland Premium Leagueを見ていますが、画面の下に字幕のようにちょろちょろと広告が出てきて、とても邪魔です。何とかして欲しいです。 ところで今回は、仕事上大変困っているLAの港でのストライキ騒動に触れてみます。 日本の新聞でも一部報道されていましたので、ご存知の方も多々いらっしゃるかと思いますが、幸松もこの騒動に少なからず巻き込まれています。実は日本製の自動車を輸入する際の船の仕事に多少なりとも関わっているのです。 今回の騒動では約10日間、アメリカ西海岸の港(29港)が全く麻痺してしまいました。船の積み荷の上げ下ろしが全く行われなかったのです。その間、100隻以上もの船が沖で碇を下ろし、荷物の積み下ろしを待っていました。当然アメリカ経済に及ぼす影響は甚大なものがあります。報道によるとその影響は金額にして1日10億ドルから20億ドルにも及ぶとも言われていました。 港での貨物の上げ下ろしは港湾労働者が行います。アメリカ西海岸で彼らを代表するのがILWU(International Longshoremen & Warehouse Union)という強力な労働組合です(組合員10,500人)。一方、雇用主を代表して交渉にあたっているのがPMA(Pacific Maritime Association)という機関です。今年の6月末に3年間の契約が期限切れとなり、その後、日毎に契約を更新して交渉を続けてきたのですが、ここにきてついに痺れが切れ、組合側がスローダウンという、安全を理由とした作業の速度を遅らせる戦術に出ました。話によると雇用主にとってこの戦術はストライキよりも質が悪いようです。一方これに対して雇用側がロックアウト(西海岸史上初)という労働者を港から締め出す対抗措置を取りました。結果として10日にもおよぶ港湾の麻痺状態が発生した訳です。 雇用主側に肩を持ってしまうようですが、港湾労働者は大変条件面で恵まれていると聞きます。報酬は非常に高いようですし、各種福利厚生も充実しているようです。それもこれも強力な労働組合のなせる業です。 今回の労使協議における一番の争点は、港湾作業のIT化と言われていました。組合側はIT化が雇用を奪いかねないとして徹底反対の姿勢を崩していませんでしたが、今のご時世IT化による効率化を図らない組織がどこにあるのでしょうか。どうやら西海岸の港は世界の他の主要港に比べても遅れているようです。(その後、IT化に関しては11月1日に暫定合意が得られました。) ただでさえ自動車と不動産以外は減速が懸念されているアメリカ経済ですのに、それに追い討ちをかけるような事態になっていたのは大変残念なことです。アメリカ経済のみならず世界経済への影響が軽微であることを祈っています(その後自動車も怪しくなってきています...)。 去年のテロ以来、United We Standと国中が一致団結してテロに立ち向かう姿勢を見せているアメリカ人ですが、外に対しては一致団結しているように見えていても、中ではこのような争いを起こしてしまい、結果として自国の経済を虫食んでしまっているのは大変皮肉なことだと言わざるを得ません。 経済への影響を懸念した政府が仲裁人を送り込みましたが、それも不調に終わりました。組合側はIT化の推進を契約書から削除することを主張して譲りませんでしたし、雇用主側は組合側がスローダウンを今後一切行わないことを確約しなければ交渉のテーブルに付かないと主張し、期待された仲裁人も功を奏しませんでした。 結局、大統領がタフト.ハートレー法という長らく使われていなかった(24年ぶり)法律を根拠とした指揮権を10月8日に発揮することで、とりあえずは80日間の冷却期間が設けられ、港での作業は再開されることとなりました。しかし、80日間(12月27日まで)で契約が締結されるかは全く不透明です。11月1日のIT関連での暫定合意によってかなりの前進が見られましたので、なんとか11月末のThanksgivingの連休前には解決してくれ、クリスマス商戦への影響が最小限であることを強く祈っています。 港が麻痺状態に陥っていた10日間、幸松の会社の車を積んだ船は3隻、沖での停泊を余儀なくされました。何千台もの車が船のなかで足止めを食らってしまったのです。納車を心待ちにされている御客様にもご迷惑が掛かりますし、新車の発売日程にも影響が出かねませんでした。10日間の滞留で港に渋滞が発生し、通常の作業スピードに戻るのにはかなりの時間を要しました。その後も船のスケジュールには甚大な影響が出ています。本当にこれっきりにして、早く解決して欲しいものです。 ところで皆さんもご存知の通り11月12日の火曜日に中間選挙が行われましたが、選挙を挟んでの1週間、本労働交渉は中断となりました。交渉の行方が選挙におかしな影響を与えない様にとの配慮からだったようです。大統領が得点を稼ごうと、一気に結論まで持っていく様プレッシャーをかけるのではと個人的に期待していたのですが、寧ろ悪影響を恐れたようです。 |