幸松 Report   #5   from U.S.A.

 

American Soccer その1

日本ではワールドカップの熱狂が完全に覚めてしまっていることでしょうが、ここアメリカではご存知の通り、そもそも熱狂自体が始めから無かったようです。しかしながら今回はそのサッカーの話題に触れてみたいと思います。

U.S.A.チーム自体はなかなかの強豪で、お忘れかもしれませんが、なんと今回のワールドカップでBest8迄進んでいます。残念ながら準々決勝こそ0−1で、準優勝したドイツに負けてはしまいましたが、大変素晴らしいチームだったと思います。その中でもキャプテンのレイナはFIFAのオールスターにも選出されています。

米国内での新聞の扱いはどうだったでしょうか。幸松が購読(スポーツ欄を見ているだけ、との厳しく、的確な指摘もある...)しているLA Times では、次の通りでした。予選リーグではスポーツ欄(10ページ程)の最後の方での扱いだったのが、次第に扱いが良くなっていき、決勝トーナメントに進出すると、俄かにスポーツ欄の一面トップに浮上する。最後の方では一般面のトップで扱われていたように記憶しています。

そう言えば、ワールドカップの最中も、何故かアメリカ国内のプロサッカーリーグ(Major League)は継続して行われていました。サッカーを盛り上げたいとの切なる願いからだったのでしょうか。

しかし、それでもやはりサッカーはアメリカ人の琴線にはあまり触れないようです。世界中がワールドカップで盛り上がっている最中、特にここLAではプロバスケットボールのLAレイカーズが3年連続世界?(全米?)チャンピオンを賭けての戦いに、町中が沸き返って、正にサッカーそっちのけのようでした。

「サッカーをフットボールと呼ばないのは、アメリカだけだ」とは良く言いますが(そう言えば日本でもサッカーですね。)、ここでフットボールというとアメリカンが頭に付いてしまいます。

何故、こんなにも世界中で人気があり、素晴らしいスポーツがアメリカではマイナー?なのでしょうか。幸松なりに単純に考えてみます。

l       点がたくさん入らないとつまらない。

l       フィジカルコンタクトが激しくないとつまらない。

l       攻めは攻め、守りは守りでハッキリしていないと気持ち悪い。

l       アメリカが発祥の地では無いから興味が湧かない。

l       個人技に頼りすぎていないか?

l       アメリカがNo.1でないと気に食わない。

l       アメフト、バスケットボール、アイスホッケー、野球、ゴルフ等が既に人気スポーツとしてビジネスとしても成功しており、サッカーが入り込む余地など無い。

様々な要因が入り交じっているのだと思いますが、偏見との謗りを恐れずに決め付けてしまうと、やはり「アメリカが一番じゃないと面白くないのだろう」という気がします。何故か国内チャンピオンを決める試合を野球などでは「ワールドシリーズ」などと臆面もなく言ってしまいますから。

そんなアメリカのサッカーですが、将来性は充分にあると思います。今後、世界的なランキングも上がっていくでしょうし、国内での人気もきっと上がって行くことでしょう。National Teamの活躍はワールドカップで実証済みですし、若手も着実に育ってきています。しかし、幸松がお伝えしたいのは子供たちレベルでの裾野の広がりと、それをサポートする確かな組織の存在なのです。

ご存知の皆様もいらっしゃるかもしれませんが、ここアメリカには子供たちのサッカーをサポートするAYSO(American Youth Soccer Organization)という全国組織があります(1964年発足)。http://www.soccer.org

全米津々浦々を細かいRegionに区分けして、男女それぞれにUnder19からUnder6までのトレーニングをサポートしているのです。驚いたことに、女子の競技参加が非常に高いようです。男子に対し全く遜色無い位盛んで、スーパー等では、練習帰りでユニフォームを着た可愛い女の子に出会うことがしばしばあります。

そのAYSOのポリシーは以下の通りです。

l       Everyone Plays(少なくとも試合の半分は、どの選手もプレーする)

l       Balanced Teams(チーム間の偏りをなくす為、毎年チームを組みかえる)

l       Open Registration(誰でも参加できる)

l       Positive Coaching(コーチも保護者も、誉めて子どもを伸ばす)

l       Good Sportsmanship(勝利至上主義に陥らず、スポーツマンシップを育む)

1チームは約15名で構成されており、コーチが一人、アシスタントコーチが数名の体制です。全員参加のポリシーの為に、1チームは小さくある必要があるのですね。メインである秋のシーズンは9月から11月半ばまでで、毎週土曜日が試合、平日に1〜2回練習をしています。試合は同じAYSOのチーム同士で競うことになります。

やはりアメリカですから、必ずしもコーチは経験者である訳ではありません。子どもの頃にはサッカーなど知りもしなかったような世代が、自分の子供たちの為に一肌脱いでコーチを一所懸命やっているといった状況で、コーチの典型的な練習時のスタイルは、Tシャツに、ショーツ(単パン)、普通の白いソックスに白いスニーカーです。どう見ても上手そうには見えませんが、コーチ、審判講習会を開催するなどして、それなりに底上げを図っているようです。きっとコーチのレベルも少しずつでも上がっていくことでしょう。

まだまだ、末端までいくとコーチ不足などの現実的問題がありますが、こうした組織の存在がある限り、こどもたちの中には大人になってもプレーを続ける子が増えていくでしょうし、プレーを止めても、大人になってサッカーというスポーツをサポートし続けるという風土が出来上がっていくのだと感じます。お世話になったAYSOでコーチをやる人も増えていくでしょう。色々な形でサッカーというスポーツに関わり続ける人が増えていくのだと思います。   (続く)

 

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